寒国しろくまと夢のたび

カナディアン夫と暮らすトロント在住フォトグラファーの思考録

今朝

ココが死んだ。

朝からビーチで撮影だったのでバタバタと支度をし、もう出ようかという時に夫が告げた。7時を過ぎてもぴちぴち言わないので彼が不思議に思って寝床を見た時には、もう固くなっていた。あまりにも突然で、動揺した。彼女を外の木のそばに埋め撮影へと向かう。行きのバスの中、息苦しかった。心がざわざわして落ち着かない。原因を考えつくだけ考えた。食べものの栄養のバランスが悪かったのかとか、部屋の中の臭いだとか、ストレスだとか、立て掛けていた仕切の下敷きになったのだろうかとか。

けれども結局いくら考えたところで彼女は帰ってこない。

 

ココは雀の雌で、ある日夫が巣から落ちているのを見つけて連れて帰ってきた。まだ雛だった彼女に名前をつけ、大切に育てていた。

つもりだった。

 

数ヶ月前に夫の父が亡くなって以来染み付いていた重苦しい家の空気を、ココは少しだけ明るくした。 もう少ししたら外に出し、虫を食べる練習をして、時期が来れば自然に放すはずだった。

 

どんな風に死んだんだろうか、と考えると可哀想でならなかった。

無責任に命を預り、勝手に可愛がって満足していたじぶんを恨んだ。

 

帰ると、彼女が寝床代わりに使っていたカーテンや日よけなどがすっかりきれいに片付けられ、夫は朝と同じ格好でベッドに寝転がっていた。

あの重苦しい「死」の空気はまたもとのとおり、さらにわたしの部屋の中にまで充満していた。