「写ルンです」でトロントの夏を撮る。

現像を頼んでいた「写ルンです」の写真データが届いた。



:Scarborough



:Ontario lakeから望むToronto city。この時間帯の空×水辺は最高。


写真データをDropboxでシェアする形で、1週間ほどで出来た。データではあっても、久しぶりに目にするフィルム写真に予想以上に心が躍る。
この独特の味がいい。フィルムならではのツブツブ感、色味、滲み出るノスタルジックな空気がたまらない。






そもそも数ヶ月前、溜まっていた家電屋のポイントを利用して半ばノリでinstax-mini8(いわゆるチェキ)を購入したのが始まりだった。
普段はデジタルカメラで人や町並みを撮っているのだが、instaxを買って以来撮影やお出かけ時に鞄に入れて持ち歩くようになった。
何度でも撮り直しのきくデジタルカメラとは違い、フィルムカメラは一枚一回きり。しかもinstaxは1つのフィルムで10枚しか撮れない。シャッターを押す前の数秒、よしここだ!という瞬間までいろんなことが頭をよぎる。いい意味で躊躇する。この「間」が楽しかった。


今春夏はポートレート撮影のため、デジタル一眼と共にトロント市内を歩き回り、様々なバックグラウンドを持つトロントニアンたちを撮っていた。当たり前だが、撮影の日はカメラ本体・レンズ数本・三脚、と重装備である。撮影中はと言うと、ライティングは、カメラの設定は、モデルへの指示は、と常に頭はフル回転。撮影後はどっと疲れが出る。


その点、このinstaxmini、電源を入れて適切な明るさを点滅表示で確認し、そこにセットしてシャッターを押すだけで写真が撮れる。しかもその場で出てくる。撮影後の編集もない。世界を見渡し、切り取りたいと思う瞬間をただ切り取ればいいだけだ。このシンプルさが、思いのほかわたしの心を自由にした。撮影続きで頭の中がぎゅうぎゅうになっていたのだと思う。何もない天気の良い休日はinstaxが活躍した。
ラベンダー畑、遊園地、港、神社、海、友人との食事、結婚式。どこにでも持ち出して思うまま感じるままに写真を撮った。



こうしてフィルムの魅力に気づき始めたわたしは、写ルンですを手に入れた。 8月に日本から戻って来てしばらくたったある日、妹がくれたのだ。中学校の修学旅行以来の、写ルンです。ピリピリと封を切ると、懐かしいフォルムがでて来た。未だに、裏に名前を書く欄がある。フラッシュボタンを上に上げると、チュイーンという音とともに四角い部分が赤く点灯する。撮影するまで巻いてはいけない(シャッターが軽くてすぐきれてしまうため)とは知っていても、このジャリ、ジャリという指の感覚が爽快でつい巻いてしまう(結局それで2枚ほど没にした)。

丁度いいタイミングでトロント・アイランドへのピクニックのお誘いを受けていたので、ポケットにつっこんで一緒に出かけた。
そう、このポケットに突っ込める、バッグにポンと投げこんでおける感じ。使いたい時にサッ。カシャッ。ポン。この手軽さがいい。デジタル一眼を持ち歩く時はそれなりのバッグにそれなりの保護をして入れて置かねばならず、重いし、取り出す際いちいち気を遣う。
写ルンですの、ポケットに入ってることすら忘れるくらいのライトさに、なんだか気持ちまでも軽くなる。
この日は天気も良く、まさにピクニック日和だった。


: 湖に突き出た橋の先で。




: 望遠鏡を覗く少年。この望遠鏡、古くてメタリックでいい感じだった。




: 島を去る前に船の上からもう一枚。




: 街中でも写ルンです。トロント市庁舎前。




ストリートカーのある風景がすき。最近言われて気づいたけど、トロントは赤いものが多い。



夏のトロントは非常に気持ちがよい。湿度が低くカラッとしていて、特に湖の近くは風が心地よい。冬が長く厳しいトロントでは、人々は春夏になるとここぞとばかりに外に出てその喜びに浸る。春先に動植物が冬眠から覚めてみな一斉に活発になるのと同じように、暖かくなると一気に街のハッピー度が上がり、用はなくてもとにかく外に出て何かしたい気分になる。真夏は夜9時ごろまで明るいので、遊びに夢中になっていたらもうこんな時間、なんてこともよくある。


今年の夏日本に帰って感じたのは、湿度が尋常ではないということ。湿度と汗で身体全体の皮膚が呼吸困難になり、シャワーを浴びるか涼しい場所に避難してさらさらシートで全身を拭くかしない限り一日中ベタベタがつきまとう。気づけばカナダでの生活が長くなればなるほど、「日本の夏、無理だ。。」となっている自分がいる。冬は日本で、夏はカナダで暮らすのがベストだなと思う。できれば将来はそうしたい。


例年になく、つい先日まで半そでで外を歩けるほど気温が高かったトロントだが、さすがに最近少し肌寒くなってきた。カナダの国旗の象徴であるメープルをはじめ、あらゆる種類の木々が色づき始めている。先日また新しい写ルンですを入手したので、早く紅葉の美しいハイキングコースを見つけて撮りに行きたい。